サービス・イノベーション株式会社は、社員4人でマーケティング支援を行っています。AIツールに月6万円を払い、外注費を月25万円削減しました。差額は月19万円です。記事1本の制作は30分から5分に、LP(ランディングページ)1本の制作は1日から1時間に短縮しました。この記事は、その実測値と、うまくいかなかった使い方を書きます。
この記事の数値はすべて、サービス・イノベーション株式会社が自社の業務で計測した実測値です。計測時期は2026年8月です。体感による見積もりは含みません。
著者: 小崎 智之(サービス・イノベーション株式会社 CMO) 新卒でフランチャイズ支援のベンチャーに入社し、新規事業の保険事業に配属。その保険事業がMBOで独立したため移籍し、最年少でマネージャーに就任しました。直営店の立ち上げ、不振店舗の回復、関西エリアの立ち上げ、不振の旗艦店の責任者を担当しています。その後、経営コンサルティング会社に入社し、入社1年目に新人コンサルタントの年間表彰を受賞。担当したクライアントは、上場直後のベンチャー企業、貿易会社、建設コンサルタント会社、飲食店コングロマリット、住宅会社、自動車関連です。テーマは、デジタルマーケティング、営業戦略、人材育成の仕組み作り、中期経営戦略策定、組織戦略、人事制度構築支援です。事業と組織の一貫性を重視する立場を取っています。学生時代からの累計でビジネス書を500冊読み、AIとビッグデータの活用をコンサルティングプロジェクトで実践しています。
AIを入れて、実際に何がどれだけ変わったのか?
変わったのは制作工程の所要時間と、外部に払う金額です。当社で計測した数字は次の4つです。
- 記事1本の制作: 30分 → 5分
- LP1本の制作: 1日 → 1時間
- 外注費: 月25万円の削減
- AIツール費用: 月6万円
差し引き月19万円が浮きました。ただしこの19万円は、削減した外注費とツール費用の差額であり、利益がそのまま19万円増えたという意味ではありません。浮いた時間を何に使うかで結果は変わります。
記事1本とLP1本の所要時間、外注費25万円・ツール費用6万円は、いずれも2026年8月分の実績です。
重要なのは短縮の倍率です。記事もLPも、一定の割合で速くなったのではありません。工程そのものが別のものに置き換わっています。人が書いていた作業を人が速く書くようになったのではなく、人が指示して機械が書き、人が確認する形に変わりました。
「AI前提の経営」とは、具体的に何を指すのか?
人の作業をAIで速くすることではありません。AIが担当する工程を先に決めてから、人の配置と支払いを組み直すことです。
順序が逆になると効果は出ません。人の手順をそのまま残したままAIを足すと、確認の工程が増えるぶん所要時間は伸びます。当社が記事制作を30分から5分にしたとき、短縮したのは書く時間です。書く工程を機械に渡し、人は事実を用意する工程と、出力を確認する工程だけを持ちました。
この組み替えは、支払い先の変更を伴います。当社は外注費を月25万円削減し、AIツールに月6万円を払っています。外注に払っていた金額が、ツール費用と自社の確認工数に置き換わりました。ツールを導入しただけで外注費が残っている状態は、費用が増えているだけです。
4人の会社が、なぜ月25万円分の外注をやめられたのか?
外注していた作業が、指示と確認の作業に変わったからです。
外注は、依頼書を書き、見積もりを取り、納品を待ち、修正を依頼する工程を含みます。制作そのものが1時間で終わっても、この往復に数日かかります。内製に切り替えると、この往復が消えます。
内訳は、記事制作代行が月5万円、LP制作代行が月15万円、事務代行が月5万円です。
社員4人という規模は、この切り替えと相性が良いです。決裁者と実務者が同じ人間であるため、外注の判断に稟議が要りません。当社は2021年設立、神奈川県川崎市に拠点を置く4人の会社です。
内製に戻す判断は、作業単位で行いました。契約単位が「制作費」のままでは、どの作業が浮いたか分かりません。当社はLP1本という単位まで下げ、その1本が1日から1時間になったことを計測しています。
この順序には理由があります。契約を先に止めると、AIの出力が使えなかったときに戻る先がありません。外注先との関係は、止めるのは1日でできますが、戻すには再交渉が必要です。内製で完了することを確認したあとに止める順序を、当社は取っています。
6つのAIツールを併用して、必須の2つはどれか?
当社が使っているのはClaude、Gemini、ChatGPT、Notion、Genspark、Manusの6つです。このうち、無ければ今の経営が成立しないのはNotionとClaudeの2つです。
残る4つは、無くなっても業務は止まりません。速度が落ちるだけです。ツールの数を増やすことと生産性が上がることは同じではありません。当社の場合、6つのうち経営の前提になっているのは2つです。
NotionとClaudeは仕事の管理全般に使っており、ほぼすべての業務がこの2つを経由します。導入したのは約1年前です。
月6万円という金額は、6つ合計の費用です。内訳はNotion 1万円、Claude 2万円、Gemini 6千円、ChatGPT 6千円、Genspark 1万円、Manus 8千円です。
AIに任せてうまくいかなかったことは何か?
バナー画像作成の自動化です。細かい修正が必要になるため、完全な自動化はできませんでした。
一方で、広告の分析と資料作成はAIに任せています。この2つは現在も運用しています。
止まったのは生成の工程ではなく、修正の工程です。1枚目は出てきます。そこから文字の位置、余白、色を直す指示を出し続けることになり、その往復が人の手を離れませんでした。
この違いは、修正の粒度にあります。広告の分析と資料作成は、出力が誤っていれば条件を変えてやり直せます。バナー画像は、大部分は合っているものの、文字の位置や余白といった細部を直したい状態が繰り返し発生します。当社はこの細部を指示で詰めるより、人が直すほうが速いという結論になりました。
自動化を諦めたのは工程全体ではありません。当社は生成までをAIに任せ、修正は人が行っています。
成功例だけを並べたAI導入事例は、導入判断の材料になりません。サービス・イノベーション株式会社で完全自動化に至らなかったのは、バナー画像作成です。理由は、細かい修正が必要になるためです。
この生産性は、他社でも再現できるのか?
再現の条件は3つです。出力を確認できる人が社内にいること。作業工程が分解されていること。その作業を外注していたこと。3つが揃わない場合、当社と同じ削減額にはなりません。
第一に、社内に「確認できる人」がいることです。記事制作が5分になったのは、出力の良し悪しを5分で判断できる人がいるからです。判断できない場合、確認に30分かかり、短縮は起きません。
第二に、工程が分解されていることです。当社は記事制作を「事実を集める」「書く」「検証する」の3工程に分けています。工程が一体のままでは、どこを機械に渡すか決められません。
第三に、外注していた作業があることです。当社の月25万円は、外注していた金額です。もともと外注していない会社では、この削減は発生しません。浮くのは時間であって、金額ではありません。
この3つ目は見落とされます。「AIで月19万円浮いた」という数字は、月25万円を外部に払っていた会社の数字です。社内の人件費は、作業が速くなっても支払いは変わりません。時間が浮いたことを利益に変えるには、その時間で別の売上を作る必要があります。当社は浮いた時間を、自社事業の広告に充てています。本人の試算では、通常月と比べて成果は1.47倍です。比較対象と算出方法は非開示のため、目安として読んでください。
社員4人・2021年設立の当社での結果です。人数と業種が違えば数字は変わります。
何から始めればいいのか?
いま外部に払っている金額を、作業単位で書き出すところから始めます。
当社が月25万円を削減できたのは、その25万円が何の作業に対する支払いかを把握していたからです。「制作費」という単位では判断できません。「LP1本」という単位まで下ろすと、その1本が1日から1時間になったときに、外注をやめる判断ができます。
次に、その作業を1回だけ自分でAIに投げます。当社はLP制作でこれを行い、1本1時間で完了することを計測しました。確認せずに契約を切ると、止まったときに戻る先がありません。
最後に、期待外れだったものを記録します。当社の場合はバナー画像作成の自動化です。何が駄目だったかを残さないと、半年後に同じ試行を繰り返します。
記録する対象は、ツール名ではなく工程です。「このツールは使えなかった」と書くと、次のツールが出たときに判断できません。どの工程で止まったかを書けば、別のツールでも同じ工程が止まるかどうかを先に確認できます。
導入するツールの数は、増やすほど良いわけではありません。当社は6つを使い、経営の前提になっているのはNotionとClaudeの2つです。残り4つは無くなっても業務は止まりません。まず2つを決め、止まらないものを後から足す順序が、当社の運用です。
よくある質問
Q. AIツールの月6万円は、何社分・何人分の費用ですか。 A. サービス・イノベーション株式会社1社、社員4人分の合計金額です。内訳はNotion 1万円、Claude 2万円、Gemini 6千円、ChatGPT 6千円、Genspark 1万円、Manus 8千円です。
Q. 記事制作が30分から5分になったのは、品質を落としたからではありませんか。 A. 工程を分けたためです。当社は事実を集める工程と書く工程を分離し、確認済みの事実だけを機械に渡しています。この30分と5分は、2026年8月に同じ品質基準で計測した実測値です。
Q. AIに任せてはいけない業務はありますか。 A. バナー画像作成は、当社では完全自動化に至りませんでした。細かい修正が必要になるためです。生成までをAIに任せ、修正は人が行っています。広告の分析と資料作成は現在もAIに任せています。
Q. 社員4人より多い会社でも同じ効果が出ますか。 A. この記事の数値は社員4人・2021年設立の当社での実測値です。人数が増えると確認と承認の工程が増えるため、同じ短縮率は保証できません。再現の条件は本文の「他社でも再現できるのか」に3つ挙げています。
Q. 導入してから効果が出るまで、どのくらいかかりますか。 A. 当社は作業単位で切り替えたため、LP制作については1本目の内製が1時間で完了した時点で判断しました。全社で一斉に導入する方法は取っていません。
Q. まず何に投資すべきですか。 A. 当社で経営の前提になっているツールはNotionとClaudeの2つです。仕事の管理全般をこの2つ経由で行っており、導入は約1年前です。6つ全てを同時に導入する必要はありません。